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暦の上に春が来た。

今くらいの寒さは、すでに春のグラデーションの中に取り込まれた寒さ、冬からこぼれ出した寒さということで、「余寒(よかん)」というらしい。

暖冬に加え、年始に小笠原に行って少しばかりの夏を楽しんできたので、僕にとっては今年の冬はいつもよりも充分に暖かかったし、「そういえば冬という冬を楽しんでいない」と思いたち、新しいマフラーをおととい買った。ところがやはりどうも暑いので、さらに暖冬を思い知ったのだった。

僕は、冬になると薄い土色の中ですべてまったく枯れている田舎の中で育ったので、冬に対するイメージは、トルコ石のクリームがかった水色を溶かした水溶液色の空と、カラカラと音を立てて歩く黄土色の枯れ葉、遠くに見える誰かの運転する車などの風景が思い浮かぶ。

その風景は今思い出しても少しさみしいもので、活気がないところからさらに活気を失わせて、寒の印象を強くしている。あの風景にもう一度溶け込むべきかそうでないのか、ふと考えては、「流れに身を任せるか」と、その責任を未来になすりつけるのが習慣になった。

そう、最近そんな未来を考えるようになった。
その風景の中でずっと過ごしている祖母や両親のことを思うと、そろそろとも思う。少なからず今、その風景は少しだけ彩度を失っている。そしてそこにまた色を塗り込めるのは、僕しかいない。誰かの人生の中に取り組み、取り込まれることを想像する。ちょっと怖いけど、人生に芯をつくる作業だ。これからそれをしなきゃいけない。

先週末に新宿御苑に行ったら梅が咲いてた。梅の咲く時期なんて今までざっくばらんにしか知らなくて3月くらいに咲くものだと思ってたからびっくりした。ちょうど小笠原に持っていった写ルンですを撮りきっちゃおうと思ってカメラを持っていたので、ちょっとだけ撮りました。今日の写真です。

そんな風に春の予感を探している。